ようせいの王さま

 

 

プロローグ 「魔法使いの弟子」

 

ここは、世界のはてにある魔法使いの館。

森にかこまれ、他に人気もない静かな場所……、

「こらーー!!」

…………静かな、

「待ちなさーーーい!!」

………………しず、

「いいかげんにしなさい、このおバカ弟子どもがーーーっ!!」

……………………。

かつては、静かだった場所。

 

大声をはりあげているのは、魔女の中の魔女とよばれるザキュイア。

はかりしれない能力をもつ偉大な魔女で、その物腰はエレガントで気品にあふれていて、風に揺れる柳に例えられていた。

――例えられて『いた』。

『エレガント』『気品』『風に揺れる柳』、そんな形容詞を過去のものにするような大声をあげさせている原因は、彼女の元で修行している三人の弟子。

まず、もっとも彼女の頭を痛くしているのが、一番長く修行をしているタルカス。

彼はミノムシの妖精と人間のハーフで、面倒くさいことが大嫌いで、いつも楽して生きようとしている。

そのくせ、『楽して生きるためなら、どんな苦労もいとわない』という訳のわからないポリシーを持っていて、その為、さまざまな騒動に巻き込まれたり、自ら騒動を起こしたりする。

他の二人の弟子は、タルカスのとばっちりを受けているとも言えるのだが、ただそう言い切れないことには、この二人、少々ノリが良すぎるのだ。

二番目に修行期間の長いランプトン、通称ランプは、三人の中でもっとも年長で、真面目でしっかりした性格で非常に好奇心旺盛だ。

ただ好奇心が強すぎるせいで、いつもタルカスの巻き起こす騒動やイタズラに参加してザキュイアに怒られてしまう。

そんな彼のポリシーは『どこでも行こう、何でも見よう』だとか……。

最後は、一番新米のクルルカン。

皆からクルルと呼ばれる彼は、お日様色の短い巻き毛と大きな目で、たびたび女の子と間違えられる。

明るくて素直な性格の彼の欠点は、『素直すぎる』ところだ。

二人の先輩たちが、楽しそうにイタズラや騒動に参加しているのを見ると、何の疑問も抱かず『素直に』自分も参加してしまう。

ちなみに、そんなクルルのポリシーは?

……『ポリシーがないのがポリシー』だそうで。

 

そんな三人が集まっての修行生活は連日大騒ぎだ。

おかげで連日怒鳴ってばかりのザキュイアに、ある日こんな依頼状が来た。

 『大魔法使いザキュイア様

  日々ますますご清祥のことと存じます。

  突然のお願いで恐縮ではございますが、我がトークノ国立魔法学校の特別講師として、夏の間の二ヶ月、トークノ国に滞在していただけませんか?

  もちろん宿泊先は最高の宿を用意し、最高のおもてなしをさせていただきます。』

トークノ国は、普通の人間なら片道で十日以上かかるほどザキュイアの屋敷から離れているのだが、もちろん魔女の中の魔女と呼ばれる彼女にはそんな距離は関係ない。

とはいえ長距離を移動する魔法は、非常に体力と魔力を消費するので、毎日往復するわけにもいかない。

依頼状に書いてあるように、トークノ国に滞在し、屋敷は空けておくしかない。

普段のザキュイアなら、こんな依頼は断るところなのだが、そうするには彼女は疲れきっていた。

それにトークノ国は世界でも有数の温泉地として知られているのだ。

――温泉地で最高の宿と最高のおもてなし……。その上、あの三人から二ヶ月間離れられる。

疲弊したザキュイアは迷うことなく依頼を受けた。

彼女の監視がなくなった三人の弟子が、どんな大騒動を巻き起こすかなどということは想像もせずに。









★続きは現在製作中...φ(・Å・´*)ヵキヵキ