夏の雨――レインの独白――






開いた窓の向こうから、雨の匂いが近づいてくる。

夏、熱くなった地面を冷やすかのように、やがて夕立がやってくるのだろう。

私は大きく息を吸い込み、しっとりと潤った空気を肺に満たした。


――こんな風に、私の心を満たすものはないだろうか。

自分で問いながら、苦笑する。

・・・分かっているんじゃないの?

いや、分かっているというほど確かな感覚ではない。

胸を騒がせる、予感がする。

自分の中に、新しい感情が生まれ始めている、そんな予感。

いつの間にか側にいた、あの人。

どうしてだろう。

あの人のことを考えると心が騒ぐ。

 

ふと、空から雨粒が落ちてきた。

と思う間もなくザァァァッという激しい雨音が辺りに広がる。

世界を白く染めるように降り注ぐ雨。


――ああ、どうか。

その一億万の雨の、たった一つでもいい。

雨を想いの矢に変えて、あの人の胸を貫きたい。